雪かき東北縦断の旅

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雪かき東北縦断の旅

旅の記録 「雪かき東北縦断」のブログです。期間は2017年1月~3月の2ヶ月間。福島県⇒山形県⇒秋田県⇒青森県と東北地方を雪かきを手伝いながらの縦断に挑戦します!

東北縦断の旅13日目後半 ~木は心を持って生きている~

 

  小野川温泉に到着した頃には日は完全に暮れていた。辺りは真っ暗闇に包まれ、視界は殆ど効かない。疲労困憊で体全体が重く、足が痛かった。歩く力はもう殆ど無かった。温泉でも足湯でも何でもいいから今すぐ暖かい湯に浸かって休みたい。しかし真っ暗で何がなんだか良く分からず、どこに行けば温泉があるのか、分からなかった。余りの疲れに気力は剥げ落ち、これから街を彷徨い歩いて温泉を探す気には到底なれず、僕は途方に暮れてしまった。そして心には、疲労とは全く別種の傷を1つ、負っていた。その傷は峠越えの最中、ずっと心の中でもやもやと蠢いていた。傷の源は一本の杖だった。

峠を越える前、熱塩温泉付近の林の中で、木の枝で僕は杖を一本作った。これまでついていた2本の竹杖は、ここまでの道中で底が削られて腰の高さ程までに短くなっており、もう既に役目を終えてしまっていた。そしてなんということか、西会津を去る際に武樋さんの所に忘れてきてしまった・・・。そうして杖を失った僕は大峠を越えるにあたり、杖を新たに新調する必要があったのである。

  木の枝を僕はノコギリを使って切っていった。あとほんの少しで切れるという時、僕はノコギリを切り口から外し、手で枝を折った。その時だった。木の皮がべリベリベリッと20㎝程剥がれてしまったのである。それを見た瞬間、僕の心に猛烈な痛みが走り、傷を負った。「うわっ、なんてことを・・・・やっちまった・・・」と。皮が剥がれた木が可哀想でならなかった。心にその傷を負ったまま僕は大峠を越えたのである。

  暗闇の中、僕は途方に暮れていた。足取りは非常に重く、ゾンビの様に歩いていた。その時だった。視界の中にパァーッとやさしい光が入ってきた。疲れはて、ボーとしていた僕は無意識にその光に向かって歩いていた。光に近づいてみると、そこは学童保育所であることがわかった。僕は思った。「あぁ、ここにならば絶対に優しい人が居る筈だ。その人は温泉の場所を教えてくれるだろう」と。そうして戸を叩くと、数人の子供と共に女性が1人出てきた。名を進藤さんと言った。暫くの間立ち話をしていると、上がって休んで行けと建物の中に招かれた。そうしてまた話していると、今夜は家に泊まっていきなさいと家に招かれた。僕は家に泊まらせて頂くことにした。進藤さんの家は年季の入った古民家で、家に入った瞬間、ずっしりと重苦しい空気に包まれた。聞くと祖先が伊達家の家臣であったらしく、家の中には実際に人を切った刀や袴、名のある方が書いた絵が張られた屏風など滅多に見ることの無い貴重な遺産で溢れていた。そこで一晩中、そして翌朝も様々な事を語り通した。話を聞いていると、進藤さんは実は木に触れると、木が何を思っているのか、何を感じているのか、木の感情が読み取れるという不思議な力を持った人であった。過去に体験した木にまつわる幾つもの話を聞かされている最中、終始僕はピリピリと悪寒が背中を走っていた。僕は思った。「この人に、皮を剥いで折ってしまった杖を供養してもらおう」と。

「実は・・・ここへ来る前に、杖を一本作ったんですけど、作る時に皮を剥いでしまって・・・杖が怒っている、悲しんでいるかもしれないんです。見てもらっていいですか?」僕は聞いた。

「分かった!!」そう言って片手に濁酒を持って、僕らは外へ飛び出し、杖の置いてある場所に急いでいった。進藤さんは濁酒を杖の上から滴らせ、しばらくの間撫でていた。その光景を僕は黙って眺めた。

暫くして、進藤さんは杖から手を離し、「終わった」と言って家の中に戻っていった。僕は後を追った。家に入り、居間に上がって進藤さんは静かに話し始めた。

「杖は全く怒っていなかったし、悲しんでなかった。むしろワクワクしていたわ。これから色んな地へあなたと一緒に行けるからって、凄く楽しみにしていたよ」

それを聞いて僕は頭の頂点から足のつま先まで一気にビリビリと電撃の様なものが走り、全身に鳥肌が立ち、何故だが涙が溢れた。救われた気がした。悲しんでいると思っていた杖が、ワクワクしていると知って・・・。心の傷は一瞬で消え失せた。

「初めてその杖を見た瞬間、私は感じたの。あぁこの杖がこの子を私の所へ導いたんだって。だからこそ家に招いたのよ」

 僕はこの体験を通し、前々から持っていた考えが、確固たるものとして固まった。それは生き物・・・いや生きていないものであっても全ての物には魂があり、心?のようなものがあるのだと。そこから植物や物を見る目線が今までと一気に変わった。全ての物は生きているんだ、と。

(杖の写真)

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  それから2月27日に到着した竜飛崎までの道中、この杖が様々な人へと導いてくれた。ある時「その変わった杖は何だ?」と突然見知らぬ人に話しかけられて家に招かれたり、その杖昨日道路で見たよ!と飲み物を恵んでくれたり、昨日、不思議な杖を突く若者と話をしたって友達が言っててね、もしかしてあなたのこと?と見知らぬ女性に話しかけられたり・・・と。

 旅が終わり、ヒッチハイクで歩いた道を辿り、お世話になった方々に挨拶しながら帰った。その途中、長旅を僕の体の一部となってずっと支えてくれた杖の供養をしてもらう為、僕は進藤さんの所へ再び寄った。

「あなたが初めて来たとき、1月19日木曜日だったわね、そして今日は3月9日木曜日・・・木の日にやっぱり来るのね」進藤さんは言った。そしてその後熱塩温泉に寄り、杖を作らせてもらった木の元へと行き、木に枝が無事に旅を終えたことを知らせてあげた。

 不思議な力を持ったこの杖が、旅の間中守ってくれたと僕は思っている。そして、これから行くユーコンの旅の為、お守りとしてこの杖から首懸けを1つ作った。杖と共に僕はこれから今回のものより、もっとスケールの大きな旅を共にしようと思う。

(杖で作った首懸け)

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 旅の記録全てを書ききらず、とても中途半端になってしまいましたが、明後日9日、ユーコンへと5ヶ月間の旅へと旅立つため、このブログは一旦ここで終了とさせていただきます。

旅を通し、道中本当に沢山の方にお世話になりました、使わなくなったテントを下さった三峰山岳会の峯川さん、使わなくなった100ℓのザックを下さったKGさん、商品の協賛をして頂いたモンベルさん、道中道を教えて下さったり、泊めて下さったり、物を差し入れして下さったり、話をさせて頂いた多くの方々へ、本当にありがとうございました。このブログの続きは、電子書籍で出版してみようかと悩み中です。もし出来ましたらまた報告させて頂きます!

物凄く不定期な更新にもかかわらず、日々多くの方が閲覧しており、驚きました。あまり更新が出来ず、御免さない。では、僕はユーコンの旅へと旅立ってきます!!

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峯川さん、上記は青森県の漁港での野宿の一枚です!素晴らしき景色と、心地よい一夜を過ごせました!!